私が初めてギターに興味を持ったのは、もう４０年も前の事だ。
その頃、日本の家庭にもテレビが普及し始めて歌謡番組やバラエティ番組で
しばしばギターを目にするようになったからだ。
その上丁度その頃はＧＳブームと言うのがあって、エレキギターと言うのが
話題に登る事が度々在った。
その当時、日本のエレキギターはこれ全てパチもんばかりと言う状況で、良い
品質のギターなど皆無に等しかった。
それでもまだテスコ、グヤトーンなどは良い方で、メーカー名も判らない粗雑な
エレキギターが巷に溢れていたものだった。
一方、ちゃんとしたギターは主にアメリカ製のGibson、Fender、Guretch、等で
非常に高価なモンでとても普通の庶民には手の出る代物ではなかった。
やがてGSブームも去り、日本中が歌謡曲で一色に染まり続ける中、少しずつ
エレキギターを取り巻く環境に変化が見え始めていた。
アメリカがヴェトナム戦争で敗退し、日本は高度成長期が絶頂を迎えていて
庶民も少しずつ高級な物を買う余力が出来始めると、さっそく庶民の高級志向に
取り入って、値段の割りに高級そうに見える物とか、高級な物をそのまま真似た
物が出始めた。
学生達はそれまでのGSではなく、イギリスやアメリカで流行り始めたNewRockなる
ものを真似し始め、楽器もそれらで使われている物を真似しようとしたのだ。
そして出て来たのがグレコ、トーカイ、フェルナンデス、アリア等のアメリカ
ギターのコピーメーカーだった。
特にグレコのギターの完成度は異常に高く「デッドコピー」等と言ってギターの
メーカーロゴを見なかったら本物と区別が付かないほど精巧にコピーした物まで
登場した。
その為、グレコ、トーカイ等は国産コピーモデルの中でも割と高級で、価格もそれ
なりに高かったのでまだ良い方の部類に分類出来たが、それらのメーカーの成功を
見た２〜３流楽器メーカーはここぞとばかりに粗悪で低価格のパチ物ギターを売り出した。

最初に出てきたのは通販会社が売り出したパチものコピーモデルだった。

トムソン　（二光通販）
この名前を見るとあの金の無かった若い日々を思い出す。
このメーカーは主に音楽雑誌の通販ページに広告を掲載して、無闇に安っぽいギターを
売っていたのを思い出す。
主力製品は、Gibsonのギターのコピーモデルで、雑誌の写真も見るからに安っぽい
写真だった気がする。
それは、本来カーブしているはずの表面が、どう見てものっぺらぼうの平面で、その後
見た実物も材質は張り合わせ合板と雑な材木で出来ており、チューニングもろくに
合わない粗雑なものであった
＜追補＞
先日、友人が古い広告を見つけて、送ってくれた。
おそらく30年前位のものだと言っていた
二光通販カタログ
もし、このページをご覧の方で、実際にこれらのギターを使っていたとか持っている
人がいらっしゃったら、是非、どんな楽器か？教えて下さい。


フレッシャー　
このメーカーは主にFenderのコピーモデルを出していた。
後には多少高級な機種も出すようになったみたいだが、このメーカーの広告を見る度に
反吐が出そうな程安っぽくて、低品質な製品ばかりだった。
70年代後期にCharと言うミュージシャンが人気になると、Fenderのムスタング
と言うモデルのしょうもないコピーモデルを作っていた。

ウエストミンスター
このメーカーはかなり後発で、以前に比べれば多少ましな製品を作ってはいたが、それでも
どうしてどうして楽器としてのヤバさはかなりなものだった。
よく見掛けたのはGibsonのレスポール・モデルのコピー商品で、この頃から海外の工場で
作るようになったらしく、値段の割りに見掛けは良くなって(巧妙に）なってきた。

90年代〜2000年代、私は殆どギターに興味を失っていたので判らない。
最近になってまた楽器を見るようになったので、パチものギターを見掛けるようになって
来た。

最近のパチものギターの主な物は

トニースミス
このメーカーのポールリードスミスギターのコピーモデルはピカ一である。
概観、構造等実によくコピーしてある。
昔のグレコのレスポールのコピーのように精巧に作られてはいるが、やはりそこは安物ギター
の悲しさで、材質はラワンや合板でどう見ても良い音が出そうもない。
他にも、GibsonのギターやFenderのギターをコピーして出している。
以前に比べれば形や色は格段に精巧になっている。
しかし、値段が本物の３０〜４０分の１、下手をしたら１００分の１だから音は推して知るべし
なのはしかたがない。

フォトジェニック
ここはGibson系のコピーモデルが多いようだ。しかしなぁ値段が１万円以下じゃいくらデフレ
とは言えあんまりだ。おまけに付属品が一杯付いてる。
恐らく、初心者にセットで売りつけるつもりだろう。

他にも
バッカス、ヒストリー、レジェンド、K・ガレージ、ソルフェージュ等
いくらでも在るといった感じだ。
最近は通販ではなく、インターネットのオークションなどで売られているようで、ギターばかり
ではなく、ベースやドラムまで格安で売られている。
しかし、凄いのは、昔は合板を型に合わせて切り取って手でサンダーを掛けたりしていたのが、
今は、海外の工場でコンピューター制御のNCで安い木材を継ぎ合わせて本物と寸分違わない
加工をしてしまうのだ。
安い工賃、安い材木、高精度のＮＣルーターなど安く作るための技術をフルに動員して、この
世の物とは思えない安物を精密に作り上げている。
恐らく、２〜３０年前の製品と比べれば品質は１００倍位良いかも知れない。
だけど材木が集積材じゃ良い音が出る方がどうかしている。



パチもんギター・ギャラリー