その日からギターの改造に取り掛かったおやぢは、まず全ての部品を取り外した。 弦をぶち切り、糸巻きを外し、ブリッジやテールピースも取り去った。 ピックアップは酷く粗末な中国製で、ボリュームやトーン・コントロールは オモチャのように安っぽかった。おまけに接続ジャックは腐食して錆びていた。 ただ、奇跡のようにネックだけはセットネックでしっかりと接着してあった。 「おやっ? 思ったほど加工精度は酷くはないぞ」 最近の韓国製とか東南アジア製の製品は、日本から高度な加工機械を持って来て 製造しているので、へたな手工芸品の製品よりは加工精度が高かったりする。 だが、この妙に厚い塗装が気になる所だ。何か隠さなければいけない物が潜んで いるような気がしてならない。 意を決してボディの裏側に罫書き線を彫刻等で刻んで行くと、ノリの悪い塗料が パラパラ剥がれて落ちる。 「これまたひどい塗装だなぁ〜、表面だけは異常にテカテカしているが中は 隙間だらけじゃないか!」 罫書き線を入れ終わったおやぢは息を整えて最初のノミを入れた。 メキッ!ノミの刃がマホガニーに食い込む。 パリッ!表面が剥がれて落ちた。が、良く見ると材木の色が全然違うのだ。 何とマホガニーは表面の数ミリだけで、その下はラワン材だ 「うわぁ〜、何じゃこれは〜!! 湿っぽいラワンじゃないか〜!!」 このギター、送料が1300円も掛かるだけあって重さが4.6Kgもあった。 その重さの原因は、この生乾きのラワン材のせいだったのだ。 おやぢは段々怒りが込み上げて来た。「ラワンでギター作りやがって!!」 と言う事は、恐らくネックもラワン材だろう。こうなって来ると表面のメイプルも 怪しくなって来る。もしかしたら表面も偽物の材木かもわからない。 |