小学校の5年生の時に、同級だった友達が引越しをした。引っ越した先は、府中よりも草深い日野の 平山城址公園と言う所で、彼の家の周りは全て雑木林だった。 その当時は、駅から少し歩くと、家は殆どなくなりどこまでも続く森と山ばかりだった。 彼もおやぢと同じく、大変な虫捕り小僧で、おやぢとつるんで夏中森の中をほっつき歩いていた。 おやぢは彼の案内で、虫捕りをしたのだが、余りのカブト虫やクワガタムシの多さに唖然としたのを 憶えている。 府中には全く生息していないミヤマクワガタと言うのを初めて捕まえたし、ヒラタクワガタや ノコギリクワガタも捕り放題で、サイズが府中のより一回りは大きかった。 だが、悲しい事に小学生のおやぢには電車に乗ってそんな遠くまで出掛けることはそう出来なかった。 府中でも沢山クワガタが取れる場所を見付けたのはその頃だ。 府中と国立の市境に四谷と言う町があったのだが、そこの一番多摩川沿いに砂利穴があった。 周囲数百メートルの穴の周りが広大なクヌギ林になっていて、付近には牛を飼っている農家が一軒 あるばかりの辺鄙な場所だった。 そこにもクワガタムシは沢山居た。どのクヌギを蹴っても必ず大きなノコギリクワガタが落ちた。 広い林の中には縦横に小道が走っていて、迷子になりそうな程深い林だった。 この林を知ったのは、小学校の4年生の時だったが、家から自転車で30分も掛かる為そう度々 行く事はできなかったが、5年生になると全力で通った。 その当時は、何故か数を競う事に熱中しており、ひと夏で数百匹のクワガタを捕まえていた。 捕まえてきた虫たちは、大きなりんご箱に押し込んであり、今考えると可愛そうな事をしたものだ。 その大事な林は、小学校6年生の春に忽然と姿を消した。 |