ヒラタクワガタ
Dorcus platymelus pilifer


採集年月日	2005/6/18〜7月
採集地		川崎市多摩川河川敷 ヤナギ樹洞及びクルミの木で採集



2005/9/4
このヒラタクワガタは、河川敷の中のヤナギの木だけで採集した個体群である。
クルミの木の固体は、このコナラのすぐ近くであり、同一個体群の仲間と思われる。
オスx8、メスx3は全て兄弟若しくは親子と見られる。
それ故、飼育及び繁殖はかなりの困難を伴うと思われる。しかし、この地域で他の
固体が全く採集出来ないので、これで繁殖を行うしかない。
飼育ケースには15センチ程度のマットを入れ、朽木を数本埋めてあるが、まだ産卵は
確認できない。
マット表面の朽木には齧った跡が沢山あるが、それが産卵に結び付くのか確信が持てない。
これらの固体は、大型(45〜51ミリ)と小型(18〜38ミリ)の二つの飼育ケースに別けて
飼育しているが、小型の飼育ケースでは抗争により死亡する固体が出ている。
飼育固体数が多いとどうしても噛み合いが起こり、死亡や負傷の原因になりやすい。
9月下旬には小型の固体を採集地に戻す予定である。

2005/9/15
元居た河川敷へ戻すヒラタをケースから回収していたら、ケースの内側に卵が産まれて
居るのを発見した。とうとう産卵したのだ。
まだ数は確認していないが、あちこちに卵があるみたいだ。
ついでに朽木も齧った後を割ってみたら幼虫が孵化していた。もう少し待ってから割り出し
をして幼虫を回収したい。
本来なら、朽木での材飼育をしたいが、それが出来るほど巨大な朽木はないので、マット
での飼育になると思う。
ネットで調べて、成績の良さそうなマットを購入しよう。



2005/9/19
今日は産卵木の割り出しを行う。
3本の朽木から幼虫を回収したが、定説の腐朽の進んだ朽木からは卵も幼虫も出てこない。
どちらかと言えば、腐朽の進んでいない硬い材からの方が沢山の幼虫が採れた。
すでに幼虫は初齢より1齢に近いものが多く、大分前から産卵していたらしい。
卵は大きさが0.5ミリ〜0.8ミリ位。幼虫は透き通っていて臀部は朽木の色が透けている。
頭は非常に小さく、体がムッチリしている感じ。
さて、マットで多頭飼育したらどんな個体が出来るのか? やはり極小固体になるのか?
来年まで試行錯誤の連続だろう。


2005/11/21
今年は多摩川産のヒラタから幼虫が合計30匹ほど生まれた。
ワシは、これらを3グループに別けてそれぞれ違った飼育環境で育ててみる事にした。
今の所、それ程の違いは現れていないが、それぞれのグループの中に特に大きい幼虫が
出てきている。
これを見ていたら別の実験も加えたくなったので、大きい幼虫だけえり分けて、マットを
3種類にしてみた。
添加剤入りマット
完熟マット
使い古しマット
以上の3種類のマットにしてみたが、先日菌糸ブロックを買ってしまったので、これを
大きい幼虫グループの中の小さい固体に使ってみたくなった。
さて、どんな結果が出てくるのか? 来年が待ち遠しいな。

2006/6

去年生まれた幼虫のうち、成虫まで育ったのは数匹だった。原因は、多頭飼育したケースが初夏の暑さで蒸れて幼虫が大量に死んでしまった。
また、生き残った幼虫のうち蛹室を作っている所へ別の幼虫が侵入して、蛹室を破壊してしまう事故が相次いだ。











そして、この成虫は秋に卵を産み次の世代へと累代していった。

2006/7月に新たに河川敷からヒラタを採集してきてこれも卵を産んだ。10月の時点では両方あわせて30匹前後の幼虫が居た。
ちゃんと冬を越せるか心配だったので、中型の衣装ケースにマットを入れ、中に朽木を数本入れて「機械式地下駐車場(深さ2メートル)」で飼育した。

2007年

幼虫は冬を越して順調に成長したようだ。ただ、冬から春に掛けて幼虫のまま死んだものがいくらか居たようだ。

2007/5
去年は丁度今頃、蛹室を作っている所へ他の幼虫が侵入して蛹室を壊す事件があったので、今年はこの時期から個別飼育に切り替えた。
最初の蛹は2007/6に羽化したが、こいつは親と同じく小型のオスだった。





これからまだ20匹以上が羽化してくると思う。
今年もこれを親にして、累代していくと思う。

2008年9月に我が家で増殖したヒラタ、数十匹を河川敷へ戻したが、その直後「台風24号」が河川敷を襲いその水害で
河畔林は流失しほぼ絶滅してしまった。 あの時戻さなければ良かったのだが、もう後の祭りである。
2011年に残っていた最後の河川敷血統のヒラタが息絶え、ここにこの系統のヒラタは絶滅したのである。