以前から目を付けている、多摩川の中洲がある。 四方を川に囲まれて人が近づけない場所だったからだ。 で、ワシは「人跡未踏」と思ったのである。 梅雨の間、水量が増えて中洲へは近づく事ができないが、梅雨が明けて晴れた日が続くと水量が減って歩いて渡れるようになる。 丁度今がその時期だった。 ワシは意を決して中洲に渡ってみる事にした。 この中州は、川崎側からだとかなりの距離がある。しかし、東京側からだと数十メートルしか離れていないのだ。 ワシは、水の減った堰堤の下を、浅い所を選んで渡っていった。 着いた所は、堰堤に一番近い上流側だった。 そこは、水際から急に土手が盛り上がっていて、おまけに夏草がボウボウと茂っている。 土手の下からでは、上にどんな木が生えているかもわからない。 草を掻き分けながら登ると、土手の上は多少起伏はあるものの、ほぼ平坦である。 すさまじい夏草を掻き分けて分け入った所に生えていたのはクルミの木だった。 かなり残念だ。ワシはてっきりヤナギの木だと思ったのだが。 その気の根元や周辺には、十数年の時を経てボロボロに朽ち果てた「人の生活の残骸」が無数に散らばっていた。 かつて、ここにはホームレスの人が住んで居たらしい。 ホームレス屋敷の廃墟か...まぁ、単なるゴミ溜めみたいなモンだな。 一番高台の平坦地から、少し降りたら突然「広場」に出てしまった。 どうも、ブルドーザーで綺麗に均したようだ。 広場の向こう側には、東京側の岸から川を越えてきた道が出来ていた。 なんだ!全然「人跡未踏」じゃないじゃないか。 よく見れば、いろいろな物を据え付けた後が新しい。 思い出したが、2週間前に河川敷で「花火大会」があったが、ここから打ち上げていたのだ。 がっかりである。 てっきり、人跡未踏と思ったのに花火の発射場だったのだ。 どうも、何かクサイと思ったら「火薬」の匂いだったのだ。 あ〜、もう、全部ぶち壊しだなぁ〜。 広場の向こうのヤナギの林を調べたが、クワガタは1匹も居なかった。 こんなに火薬臭くては虫も寄り付かないだろう。 結局、1時間以上もヤナギの木を探して歩いたが、ノコはおろかコクワも居なかった。 途中からやけに暑くなってきて、すっかり脱水症状になりかかったよ。 もう、二度と行くものか! 忌々しいとはこの事だな。