先日、河川敷の樹林帯がすっかり破壊されてしまったのは書いたと思うが、他の場所も心配なので見て回ったら、エライ事になっていた。

破壊された樹林から1Kmほど上流の土手の上の樹林がこれも伐採され、護岸工事に使うコンクリート・ブロックの集積場所にされていた。
なんて事をするんだろう? ここにもかなりのクルミの樹が生えていて、多くのコクワガタが棲息していたのに。
そこから少し下流の土手の下に、何本かの立ち枯れの朽ち木があるのだが、そこも近いうちに護岸工事が始まるらしく、土木機械を搬入する仮設の道路が出来ていた。
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この立ち枯れの朽木は、実に良い朽ち方をしていて、根元近くにはキノコが付いていて、幹には沢山の「脱出痕」が出来ている。
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随分長い事甲虫類の揺り籠として沢山の幼虫を育んできたのだろう。
そんな朽木の傍には「工事中、立ち入り禁止」のロープが張られ、道の脇には資材が搬入されていた。
ここも工事が始まるのは時間の問題だろう。

多分、工事が始まったら、土手の下の草地は1回全て機械で削られて、コンクリートのブロックを積み上げられてしまうだろう。
そうなったら、朽木も何もかも穿り出されて、朽ち木に居るクワガタの幼虫も殺されてしまうだろう。

ワシは、クワガタの救出をする事にした。
せめて今居るクワガタだけでも救いたいので、朽木を別の場所に移動しようと思ったのだ。
工事予定地域から少し離れた所の、小高い中州まで持って行けば助かるのではないか?と思って朽木を掘りに行ったのだ。
ところが、思いの他朽木はしっかりしていて、多少根っ子を掘った程度では倒れそうも無い。
オマケに、朽木の周りはつる草が絡み付いていて動かせないのだ。

諦めるしかないのか?

こうなったら仕方がない。朽木を割って、中の幼虫だけでも救い出そう。
ワシは朽木を削り始めた。
その朽木は、ちょっと表面をはいだだけで沢山の食痕が現れ、表面のよく朽ちた部分には沢山の生き物の痕跡が走っている。
高さ1.5mの朽木の天辺付近にはカミキリムシの幼虫が沢山居た。これらは持って行ったビニール袋に朽木ごといれた。
少し下の方には、多分コクワと思える幼虫が沢山入っていた。少しづつ下の方へ移動して行くと、表面のよく朽ちた部分とまだ朽ちていない生木に近い部分との境目辺りにかなり大きな幼虫が多く出てきた。もしかしてノコギリか?
根元近くのキノコがビッシリと生えている部分からは、丸々太った幼虫が沢山出てきた。
ここに居た幼虫は、もうすでに終齢に近いのか若干、黄色みを帯びてムクムクしている。
根元の土の中に潜っている部分からも同じ様な幼虫がでてきた。この辺りはまだ木質が堅く、生木に近い感じで、余り幼虫は出てこなかった。
この朽木1本から、クワガタの幼虫を30匹以上取り出した。時間は2時間かかった。
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近くにもう1本朽ち木があったので、こちらも倒そうとしたが倒れない。
どちらも根っ子が思いのほかしっかりしていたのだ。
どちらかと言えば、こちらの方が枯れてから時間が浅い感じで、殆ど朽ちていなかった。
削ってみても、出て来るのはカミキリばかり。この木も30分ほどかけて削ったがクワガタは出なかった。

しばし休憩した後、削った木片と幼虫を持って中州へ移動。
以前から目を付けていた朽木の1本にクワガタの幼虫を入れる作業を開始した。
この朽木は、直径が30Cmほどで、倒れて半分が泥に埋まり半分が地上に露出している。
この朽木のあちこちにナタで割れ目を作り、クワガタの幼虫を入れた。上手く潜ってくれるだろうか?それが心配である。
20箇所ばかりえぐって幼虫を入れたが、もう一杯で入れる所がなくなったので、仕方なく幼虫18匹は家に連れて帰って、家で飼育する事にした。
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そこの近くに、大きなヤナギ?の木の切り株があるのでそこへカミキリの幼虫は木くずと一緒に活けて来た。多分自分でもぐりこんで行くだろう。念のため、切り株にはビニール袋を被せて、カラスによる食害を防ぐ。
切り株の断面は、折れたようにギザギザなので幼虫はスキマに潜り込むだろう。

まぁ、こんな事をやっても単なる自己満足なのはわかっているが、何もせずに昆虫の生息場所が破壊されてしまうのを指をくわえて見ているよりは少しはマシかと思う。
何しろ、一旦工事が始まれば問答無用で環境は破壊されてしまう。
この前の場所も、樹林を切り倒してブルドーザーで一気に根っ子を掘り起こしてダンプに放り込んでやっつけてしまったのではないだろうか。
ここだって、朽木などパワーシャベルの一撃で、あっと言う間に粉砕されて泥と一緒にダンプの荷台行きだろう。そうなったらその中に居る幼虫などひとたまりも無い。
たとえ生き残った幼虫がいたとしても、その上にはコンクリートのブロックが敷かれて周りをコンクリで固められてはどうにもならない。

こうして河川敷の昆虫達は、自然災害にやられずとも人間の都合によって環境を破壊されて、行き場を失って滅んでしまうのだ。
これでは自然環境が失われるのは無理ないな。