光の道は遠い
光ファイバー・ネットワークはいずこ

それはある日突然やって来た

ある日、おやぢは何もする事がなくて家でぼんやりしていた。
まぁ、普段からおやぢはいつもぼんやりしているのだが今日は特にぼ〜っとしていた。
「あ〜、退屈だぁ。何か面白い事はないんかなぁ〜」
その時おカミさんが「閑だったら新聞でも取ってきて頂戴よ」などとやや怒気をはらんだ口調でおやぢに言う。
仕方なくおやぢはマンションの玄関へ新聞を取りに行った。すると、郵便受けになにやら大きな茶封筒が押し込まれていた。
「おや?これは何だ?」
部屋へ戻る道すがら封筒の宛名を見てみるとおやぢ宛てで、その上「光ファーイバー・インターネットに付いてのアンケート」等と書いてある。
最近、おやぢはADSLのスピードにはまるで関心がなくなってしまっていた。何故なら、1.5M→8M→12Mと早くしたのに少しも早くなった気がしないのだ。
最初はいろいろ設定をいじってみたりしていたが、全然効果がない気がして嫌になって放り投げてしまったのだ。
部屋に戻って、封筒を開けてみると何枚かのアンケート用紙が入っていて、このアンケートに答えると何か粗品をくれると言うのだ。
「どうせマンションじゃ光ケーブルなんぞ入れられないんだな」などとぶつぶつ言いながら中のチラシを見ていると「マンションでも1軒から導入可能!」などと書いてある。
「うっ、本当か!?...どうせ駄目元でアンケートを書いて粗品でも貰うか」
アンケートは光インターネットを導入したいか?とかもっとインターネットを速くしたいだろ?とか光ケーブルを入れれば今より100倍接続が速くなるようなことばかり書いてある。
おやぢは適当に記入するとタバコを買いに行ったついでにポストに放り込んできた。

それから2〜3日何事も無く過ぎたある夜、例の光ケーブルの会社からおやぢに電話が掛かってきた。
「先日はアンケートにお答え頂ありがとうございました。それで、お客様は光ケーブルの導入をご希望とご回答いただきましたが、丁度、現在弊社では工事費無料サービス期間なのですがこの際光ケーブルの導入をお決めになってはいかがでしょう?」
などと言う事を息も継がずにまくしたてる。
無茶苦茶早口でまくし立てる女だなぁなどと思いながら尚も聞いていると、「お客様のマンションでもすでに何人かの人がご希望していらっしゃいまして、今なら優先的に工事等を行えますので素早く光インターネットに切り替える事ができますが、いかがでしょう?」
「でも、うちのマンションは管理組合が許可しないと駄目なんだよ」
「いえいえ、お客様、管理組合とか管理会社との折衝はこちらの専属の折衝係りがお話させていただきますのでお客様は何も心配する事はありません」
話を聞いていると、もう直にでも光通信用の機器を管理室に置いて設置できるような事を言っている。
「ところで、初期費用とかはどれくらい掛かるんだ?」
お客様!今なら無料なんでございますよ、無料!。その上、お客様のマンションでご利用の部屋が増えると利用料がホラ!このように段階的に安くなるんです。今ですよイ・マ!」
「ホラって、何がどうなんやら。」電話の声は段々絶叫調になって来た。
「その上、今お申し込み頂くとIP電話の申し込みも無料ですし、このIP電話って言うのが凄いんです。どこへ掛けても料金は格安!IP電話同士ならこれまた無料!何時間話しても無料なんです!どうですか?申し込みしちゃいなさいよ!!エっどうよ!!
「ひぇ〜!光インターネットの押し売りかい、わ、判ったから大きい声で怒鳴らないでくださいよぅ〜」...「じ、じゃ〜申し込みますから早く繋げて下さいよ」
ありがとうございました〜、では、早速お客様のマンションの管理会社と折衝に入らせていただきますので、逐次経過をご報告させていただきます。あっ、遅くなりまして私、担当の契約課のXXと申します。 ご連絡は先日のアンケートの封筒の電話番号へお願いします。それと、メールはその下のアドレスですので何かありましたらお願いいたします。もう、お客様のマンションの前まで光ケーブルは施設してありますので許可が下りましたらすぐに工事に入れますので、もう少々お待ちください〜、ホントもうすぐですから!明日は無理だけど、今日が12月半ばだから年明けすぐにでも、イヤ、年明けは無理か2月までには、多分3月までには...まぁ、そんなに長くはお待たせしませんから。」
「あ、あの〜、なるべく早くお願いしますよ。以前ADSLでひどい目にあってるんだから」
「勿論、そのような事は御座いませんからご安心を!。で、お客様、マンションの管理会社の連絡先を 教えて下さい」 「えっ!知らないの!? 知ってて説明してたんじゃないの?何だ、もう話が通ってるのかと思ったらその程度なのね。まぁいいや、こうなりゃ何でも良くなってきた」
機関銃のような電話を切ったらもう何やらすぐに光ケーブルが通るような気がしてきて、すでにマルチ商法の被害者状態になっていた。


続く